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BASF PAHT CF15とPET CF15の違い

2023.10.14

Raise OFPシリーズではドイツのBASF社からPAHT CF15PET CF15の2種類のカーボンフィラメントをラインナップしています。

BASF Ultrafuse フィラメント

どちらもカーボンファイバーを含有した強度・耐熱性に優れた強化フィラメントですが、具体的な性能にどのような差があるのか今回はこの2種類のフィラメントの試験結果と造形時の使用感について比較紹介していきます。

 

フィラメント物性値の比較

本記事のフィラメント性能についてはメーカーが作成するTDS(テクニカルデーターシート)の結果を参考にしています。

今回はデータシートから耐熱性・引張強度・曲げ強さの3点について試験方法の例も併せて紹介します。

 

データシートへのリンク

Ultrafuse® PAHT CF15 テクニカルデータシート
Ultrafuse® PET CF15 テクニカルデータシート

 

・荷重たわみ温度(HDT:Heat Distortion Temperature)

荷重たわみ温度の図

荷重たわみ温度(株式会社ロンビック)

3Dプリンターに使用されるフィラメントの耐熱性能は一般的にISO75-2に則った荷重たわみ温度で決まることが多くあります。
荷重たわみ温度とはHDT(HDT:Heat Distortion Temperature)とも呼ばれ、物体に荷重を与えた状態で耐えられる温度です。長方形のプラスチック試験片に一定の荷重をかけた状態で温度を上昇させ、変形が始まった温度を荷重たわみ温度とします。

PAHT CF15とPET CF15の荷重たわみ温度に関する試験結果はについては下記になります。

 

・PAHT CF15 Filament
HDT at 1.8 MPa (dry) 92℃ / 198 °F ISO 75-2
HDT at 0.45 MPa (dry) 145℃ / 293 °F ISO 75-2

・PET CF15 Filament
HDT at 1.8 MPa  80℃/ 176 °F ISO 75-2
HDT at 0.45 MPa  108℃ / 226 °F ISO 75-2

・ABS Filament
HDT at 1.8 MPa  103.9℃/ 219 °F ISO 75-2
HDT at 0.45 MPa  98.2℃/ 209 °F ISO 75-2

0.45MPaの圧力をかけた試験でPAHT CF15は145℃、PET CF15は108℃となっています。

どちらも高い耐熱性を有していますが、150℃近くの耐熱を持つPAHT CF15の方が高温環境下での使用に向いていると言えます。

 

・引張強度(Tensile strength)
引張強度の図

図:Tensile Property Testing of Plastics

 

引張強度とは引張試験(ISO527)において試験片に引張荷重を加え、材料が破断されるまでの結果を測定します。

メーカーからのTDSでは試験片の引張方向は積層方向のZ軸ではなく、XY方向にプリントした造形物を使用します。

 

測定結果

・PAHT CF15 Filament
103.2 MPa / 15.0 ksi

・PET CF15 Filament
63.2 MPa / 9.2 ksi

・ABS Filament
33.3MPa/ 4.8ksi

測定結果から引張強度はPAHT CF15がPET CF15に比べて倍近くの強度を持つことが分かります。

 

・曲げ強さ(Flexural Strength)
曲げ強さの図

図:Bending flexural test

曲げ強さは曲げ試験(ISO178)において試験片に曲げる力を加えた際に破壊に至るまでの最大荷重を基に算出した曲げ応力の値です。これにより機械的強度を数値化します。

 

測定結果

・PAHT CF15 Filament
160.7 MPa / 23.3 ksi

・PET CF15 Filament
108 MPa / 15.7 ksi

・ABS Filament
72.8 MPa / 10.6 ksi

こちらの測定結果もPAHT CF15が高い数値を示していることが分かります。

 

造形品質・使用感の比較

ここまでメーカーからの各フィラメントの機械特性に関する試験結果を一部紹介しました。次は数値化されたデータ以外に、弊社にて実際に2つのフィラメントを業務で使用して感じた造形の仕上がりや使い勝手など感覚的な差について紹介していきます。

 

・表面の手触りが違う
PET CF15はPAHT CF15に比べて造形物の表面が滑らかな質感になります。

 

・PET CF15の方は糸引きが少ない
多少の糸引きは発生しますが、PAHT CF15に比べて糸引きの量は少なめです。

 

・PET CF15はドライボックス無しで造形ができる
フィラメントの主材料が吸湿性の少ないPETを使用している為、ドライボックスを使用しフィラメントを乾燥状態で保管しながら造形する必要がありません。

 

・PET CF15は高湿度環境に最適
PAHT CF15の主材料である吸湿性のあるPAを使用していない為、飽和吸水条件下での強度と剛性の低下と変形が少ないです。

 

・PAHT CF15は4㎜タングステン強化ノズルでの造形も可能

より繊細な造形ができる0.4㎜径での造形が可能です。PET CF15は検証の結果0.4㎜径のノズルでは詰まりが発生し造形が出来ませんでした。

※ノズル詰まりが絶対に発生しない保証ではありませんので安定性を重視する場合は0.6mmタングステン強化ノズルの使用をお勧めします。

 

・PET CF15は比較的反りが少ない
どちらも樹脂の収縮が抑えられていますが、PAHT CF15と比較してPET CF15の方が反りは少なめです。

 

 

最後に

PAHT CF15とPET CF15はどちらもカーボンファイバーを使用したフィラメントとして高い機械特性を持つことが分かります。

カーボンファイバーを含有したフィラメントはBASF社製のフィラメント以外にもRaise3Dシリーズの3DプリンターであるE2 CFには専用フィラメントとして吸湿性を抑えたPA12(ナイロン12)や更に高い耐熱性を備えたPPA(ポリフタルアミド)をベースとしたフィラメントをラインナップしています。

E2CF

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