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【PP・グラスウール】NANODAX社グラスウール入りPP-GW造形レポート

2021.06.07

高い造形安定性と寸法精度の国産ポリプロピレンフィラメントが登場

3D magic

ポリプロピレン(PP)は引張強度、衝撃強度、耐薬品性といった機械的特性の優れた樹脂であることから多くの分野でニーズが高い反面、3Dプリンターで使用する場合だと収縮率の高さから反りなどによる造形難易度と寸法精度を得ることができず、扱いが非常に難しい物になります。

3D magic

そこで日本の樹脂メーカーであるナノダックス株式会社はPPの中にグラスファイバーよりも極細なグラスウール充填することでPPの収縮を抑えた世界初の国産3Dプリンター用PPフィラメント「3D magic」を製品化しました。

フィラー入りフィラメントとしてグラスファイバーはよく耳にしますが、グラスウールはあまり馴染みがないかと思います。

ナノダックスのグラスウールは従来のグラスファイバーに比べて繊維長が短く、繊維径が細いことからキメ細かくPP内にファイバーが充填されています。

これによりPP一番の難点であった収縮率の高さを抑え、反りが少なく寸法安定性に優れたフィラメントを実現しました。

3Dmagicの中身、フィラメントは真空パッキングされており、造形時の設定値や注意点などが記載されたマニュアルも同梱されています。
一般的なフィラメントの大半が海外製の英語表記な中、国産フィラメントはマニュアルなども日本語で丁寧に記載されているのでありがたいですね。

フィラメントリールは近年、海外メーカーも導入を進めている紙リールです。

3D magicは無色透明なナチュラルPPに比べて乳白色の様な半透明でフィラメントの表面はグラスウールによってザラザラした質感になっています。

フィラメント容量は1巻500gで密度は1.023㎏/㎥とナチュラルPPが約800㎏/㎥であることからPPの特徴の一つであった低密性は失われている様です。

早速造形を行っていきます。

ボートサンプルを造形

ボートサンプル造形中

3Dプリントの検証としてポピュラーな形状であるボートを造形していきます。
3Dmagicは反りが抑えられていても材質がPPであるため、ビルドプレートにPPシートの貼り付けが必要不可欠です。
またフィラメントにファイバーが入っている関係上、通常の真鍮ノズルでは摩耗のリスクがあるのでタングステン強化ノズルに交換します。
メーカー曰くグラスウールはグラスファイバーよりもノズルへのダメージは少ないですが、僅かな摩耗は避けられないとの事です。

ボートサンプル造形中

造形に影響が出る程の反りは無く、ナチュラルPPよりもPPシートへの定着性は高いことが伺えます。

ボートサンプルの完成品

出来上がりました。

ボートサンプルの完成品

左:BASF PP(ナチュラル) 右:3Dmagic

ナチュラルPPで造形したボートと比較して、ブリッジの部分も垂れることなく綺麗に造形できています。煙突部分も歪みがありません。
糸引きが若干残る印象でしたが、ノズル温度とリトラクトの設定で改善できそうです。

左:BASF PP(ナチュラル) 右:3Dmagic

オーバーハング部分は2種類とも垂れる事は無く造形できました。
3Dmagicの方が綺麗に見えますが、BASF PPは3Dmagicよりもクリアなので内部充填が透けて見えてしまっているだけで、指で触った感じでは積層が荒れていることはありませんでした。もう少しオーバーハングのある造形で大きく差が表れそうですね。

大型造形とサポートに挑戦

約150×150×60㎜のポンプハウジングを造形します。
PPシートのサイズが200㎟ですのでPPとして造形する中では大型になります。

中身は空洞になっているのでサポートが幅広く造形される形状になります。
ナチュラルPPの場合、このサイズは収縮によってPPシートごと造形物が反り上がってしまい、サポートは造形物と完全に接着して剥がすことが困難になります。

PPなどのラフトを使わず、プリントベッドへ直接造形する必要があるフィラメントは造形開始の1層目が重要になります。
吐出したフィラメントが少しでも剥がれていたりすると全体の失敗に繋がるので1層目は面倒であっても目視で確認するのが理想的です。

造形物の輪郭に沿って重ねて描く「ブリム(紫の部分)」と呼ばれる設定はPPの反りと安定性を高めるのに重宝する設定です。

ブリムの設定はideaMakerの「プラットフォームの追加」で選択ができます。
ブリムはBASF PPPP-GF30、その他反りの強いフィラメントにも有効です。

完成しました!

大型造形でも縁の部分は目立った反りも無くピッタリと定着しています。
おかげで造形中のトラブルはありませんでした。

プラットフォームから造形物を剥がしました。
縮れた糸状の物は造形物から取れてしまったブリムの部分です。
造形物自体はPPシートにしっかり定着している為、剥がした際はシートごと剥がれてしまいました。
PPシートはこれに限らず、BASF社製PP及びPP GF30も同様に剥がれやすいので、大型造形の際のPPシートは一回限りの使い捨てと考えた方がよさそうです。

気になるサポート部分も力を加えることなく簡単に取れました!
ナチュラルPPではサポートが本体と完全に接着してしまっていたので驚きです。

サポートの底面も中心の円を除いて、他フィラメントのサポートと大差がない綺麗な仕上がりです。
中心の崩れてしまった円部分はサポートが十分に乗っていなかったのが原因だと思われるため、サポートのオフセット範囲を増やすか底面造形時の流量を調整することで改善が可能です。

色合いは半透明な乳白色でLEDなどの光を通す透過性はあります。

今回紹介したnanodaX 3D magicをRaise3Dで使用する際のテンプレートはOFPのページにてダウンロードが可能です。
Raise3D OFP

フィラメントの物性値に関するTDSや安全性に関するSDSはRaise3Dのダウンロードページにて参照が可能です。
・Raise3D OFP
TDS/SDS

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