技術レポート

PolyBoxの運用方法

暖かくなり始めるこの季節、同時に湿度も高くなっていき梅雨になると湿度は80%に迫る多湿な環境になっていきます。

FFF方式の3Dプリンターにおいて湿気はフィラメントの天敵でありコンディションに大きく影響します。

吸湿したフィラメントで造形を行うとフィラメントをノズルで溶かして吐出する際にフィラメントからポツポツと気泡と蒸気が発生します。

この現象はフィラメント内部の吸湿した水分がノズル熱で沸騰することにより発生し、糸引きや仕上がりの低下、造形成功率など様々な面で悪影響を及ぼす他、気泡が発生する際の内圧負荷によってノズル詰まりが発生するリスクが高くなります。

その為、吸湿性の高いフィラメントは乾燥状態を維持しながら造形する必要があります。

フィラメントを湿気から守るPolyBoxとは

今回、吸湿性の高いフィラメントを使用する際に最適なPolymaker社製「PolyBox」の運用方法について紹介していきます。

PolyBoxは、3Dプリンター用フィラメントの天敵である「湿気」からフィラメントを守る専用のボックスです。

PolyBoxには庫内に回転台とフィラメント挿入口が備わっている為、フィラメントを常に最適な乾燥状態にキープしたまま保管・造形ができます。

庫内はRaise純正の1kgフィラメントスプールからPolymakerやBASFの750gスプールなどにも幅広く対応します。

PolyBox付属のフィラメントチューブは2.85㎜径のフィラメントにも対応できるようになっていることからチューブが太く、Raise3D本体のフィラメント差込口と互換性がなく使用するには扱いにくく感じます。

その為、付属のフィラメントチューブの代わりにRaise3Dに付属しているフィラメントチューブを使っていきます。

Raise付属のフィラメントチューブを使う場合、PolyBoxの差込口には少し細く隙間が出来てしまうのでビニールテープやマスキングテープを巻いて密閉性を上げるか、PolyBoxのフィラメントチューブを短くカットして差込口にジョイントさせる事で対応可能です。

PolyBoxの配置場所について

PolyBoxの置く場所はプリンター上部か側面へ配置します。
上部に置く場合は脚立やラックを使用します。
プリンター上部と近い高さにPolyBoxを配置してフィラメントを供給することができます。

側面に配置する場合はProシリーズ本体の正面右側にある扉にフィラメントチューブ差込用の穴が空いていますので画像の様にフィラメントチューブを通してセットします。

フィラメントチューブの屈折によってフィラメントに抵抗が生じやすいので試しにフィラメントを引っ張り抵抗の加減をチェックしながらセットしてください。

PolyBoxマウントを造形して使ってみる


Raise3D海外公式サイトにPolyBoxをPro3/Pro2にマウントするベースの3Dデータが配布されています。

Raise3D公式STLダウンロードページ ※クリックするとダウンロードが始まります。

かなり大型のモデルである為、高さが600mmまで造形ができるPro3/Pro2Plusモデルでの造形が理想でありますが、角度調整で斜めに配置することで造形時間とフィラメント使用量は増えてしまうもののPro3/Pro2でも造形は可能です。

大型造形になるのと篏合パーツとなるのでフィラメントはPLAでの造形が望ましいです。

まとめての造形もできますが、万が一失敗してしまうとフィラメントを大量に無駄にしてしまうので個別に都度、造形を行う方が失敗のリスクも抑えられます。

造形したマウントを組みて立ててPro3Plusに取り付けてみました。

側面のスペースを占有してしまいますが、この様に配置することが出来ます。

PolyBoxのベースはProシリーズ上部フレームに引っ掛けているだけですので脱落が心配な場合は取り付け部の裏に厚手の強力な両面テープを張り付けると安定して保持することが出来ます。

乾燥剤について

PolyBoxには乾燥剤を使用します。

フィラメントの理想的な湿度は15~30%程です。

また乾燥剤は時間経過とともに除湿効果が弱まっていきます。

除湿効果の弱まった乾燥剤では十分な庫内湿度を維持できなくなってしまう為、定期的に新しい乾燥剤と交換するか乾燥剤を加熱させ効果を回復させる必要があります。

PolyBoxに付属している乾燥剤の効果を回復させるにはPolyBox付属の乾燥剤の場合、電子レンジで解凍モード(200W)を選択して5分間加熱します。

5分経過して取り出したら3分間、乾燥剤を冷まします。

冷ましたら再度、解凍モードで5分間加熱しこの作業を4回繰り返します。

※PolyBox付属の乾燥剤を使う場合の加熱方法です。社外製の乾燥剤にはそれぞれの取扱説明に沿った方法で加熱してください。
※必ず解凍モードで加熱を行ってください、通常モード(500W)で加熱すると乾燥剤が破裂する恐れがあります。

乾燥剤は社外製も使用可能です、電子レンジを使用しての乾燥処理に手間がかかる場合はコンセントに差すだけで乾燥処理を行う便利な乾燥剤もあります。

東洋リビング株式会社が販売しているモバイルドライシリーズは乾燥剤本体に加熱機能が備わっており、コンセントに差して6時間程で乾燥機能が回復し繰り返し使える便利なアイテムです。

湿度管理について

PolyBoxには庫内の温度と湿度を測る装置が付いています。簡易的な物ではある為、高精度の湿度計と比較して±5~10%誤差が生じることからあくまで目安として使います。
使用した感覚では簡易湿度計の数値が10~20%の値であれば十分フィラメントの保管に適した乾燥状態となっています。

復活させた乾燥剤を投入して約20時間後までの庫内湿度の状況です。

乾燥剤投入から3時間程で庫内湿度は40%から20%まで下がり、最終的には約13%まで湿度を下げることに成功しました。

PolyBoxは構造上、フィラメントを取り出す際にカバー全体を取り外す構造から湿気を大量に取り込みやすくなっています。

乾燥剤も一度の開閉による湿気の侵入で乾燥力を大幅に使ってしまう為、カバーはなるべく取り外さず、外した場合は乾燥剤の状態をこまめにチェックするようにしましょう。

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