技術レポート

フィラメントを節約するためのノウハウ

3Dプリンターを使っている中で、少しでもフィラメントの使用量を抑えて造形をしたいと思ったことはありませんでしょうか。

今回はRaise3DのスライサーソフトであるideaMakerでフィラメントの節約に役立つ設定を紹介していきます。

フィラメントを節約する為のポイント
・モデルの充填率を下げる
・サポートの充填率を下げる
・充填形状の変更
・ラフトの中空構造を維持する
・上面と底面のソリッド数を減らす

尚、ここで紹介する設定は主にPLA/ABSといったスタンダードフィラメントでの使用を想定した設定になり、全てのフィラメントで使える設定ではありません。
反りやクセが強いといった特殊なフィラメントでは造形不良を起こす原因にもなりますのでご注意ください。

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・モデルの充填率を下げる
充填率を下げるのはフィラメントを節約する上で基本的な設定ですが、これが最もフィラメントの消費を抑えられる設定になります。

・設定方法
充填 → 「充填率」を変更
インストール済みのテンプレートの設定では15%になっていますが、PLA/ABSといったフィラメントならば10%程まで落としても殆どの場合、造形自体に支障はありません。

充填率15% ※150㎜の立方体でシミュレーション
造形時間41時間48分
フィラメント消費量 約790g

充填率10%
造形時間32時間30分
フィラメント消費量 約587g

5%充填率を落とすだけで200gのフィラメントを抑えられ、その分の造形時間も大幅に短縮されました。

・サポートの充填率を下げる

・設定方法
サポート → 「充填率」の数値を変更
モデルの充填率と同様にサポートの充填密度を下げることでフィラメントと時間の節約ができます。

充填率15% ※100㎟×20㎜の机形状でシミュレーション
造形時間7時間12分
フィラメント消費量 約98g

充填率15% ※100㎟×20㎜の机形状でシミュレーション
造形時間5時間22分
フィラメント消費量 約75g

時間とフィラメントの消費を抑える効果的な設定でありますが、サポートの充填率を下げることで隙間が大きくなるため、サポートに接する底面が多少荒れる可能性があります。
またスライス画面の様なサポートに接する底面がフラットな造形物に対しては効果的ですが、曲面や狭い箇所ではサポートと造形物自体が崩れる可能性がある為注意が必要です。

・充填形状の変更(新形状「ジャイロイド」で低充填・安定性を実現)
ジャイロイドとは周期極小曲面とも呼ばれ、XYZの3方向に無限に連結された3次元形状です。
これによって、通常よりも少ない充填率で強度と安定性で効果的な形状を生成でき材料の使用量が削減されます。

・設定方法
充填 → 「充填形状」を「ジャイロイド」に変更

少ないフィラメント数で効果的な強度も得られる充填形状ですが、デメリットとして、アルゴリズムの処理によってデータや造形サイズでスライス時間が大幅に掛かってしまいます。
また波状に造形を行う為、通常よりも造形速度が遅くなる面もあります。

・ラフトの中空構造を維持する
造形物の中には中身が空洞の筒形状を造形する際、デフォルトの設定では画像の様に全面にラフトが造形されます。

この造形物が接していない余分なラフトを造形しない設定があります。

・設定方法
プラットフォームの追加 → 「ラフトの中の中空構造を維持する」にチェック

これによって造形物に囲われた内側を造形せずにラフトを生成することができます。
造形時間は20分程の短縮でフィラメントは10g程の節約と僅かでありますが、造形物自体の設定を変更せずに使用量を抑えられる効果的な設定になります。
また、この設定はプラットフォームへの樹脂の接地面積が減ることで造形物が剥がし易くなり、プラットフォームの摩耗を抑える面でも効果的です。

・上面と底面のソリッド数を減らす
上面と底面のソリッドとは、モデルの 充填形状にフタをする部分になります。
超高品質のテンプレートでは上下共に20層、高精度10層、標準では5層に設定されています。

上面の層は充填の網目になっている部分にフィラメントが重力で多少垂れ落ちてしまう関係上、減らすことはお勧めできませんが底面はその影響ありませんが、底面のソリッド数を1層や2層程度にしてしまうとラフトから造形物を剥がす際に底面が一緒に剥がれてしまう可能性があります。

大型の形状であるほど、ソリッドレイヤーの造形範囲は広くなるためこの設定を調整すると劇的に造形時間とフィラメント使用量を抑えることができます。

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